古典漢語は世界認識の際、物や事をイメージとしてつかんで言語化するという特徴がある。これを図形として表象するのが漢字である。漢字を解析していくと古代人の捉えた原初的イメージをあばき出すことができる。この作業を「漢字の考古学」と呼ぶ。考古学的発掘の作業に似ている。漢字は原初的イメージの宝庫である。「イメージの世界遺産」と名づけることもできよう。
例えば「陸」を分析すると「坴(リク)+阜」となる。「坴」を分析すると「圥(ロク)+土」となる。「圥」を分析すると「六(ロク)+屮」となる。陸→坴→圥→六と掘り下げていくと、「六」に到達する。「六」が原初的イメージである。これは「ᑎの形に盛り上がる」というイメージである。この形のイメージをもつ具体的なものを圥(キノコ)といい、坴(盛り土、おか)といい、陸(丘や山の集まり続く大地、陸地)というのである。では「六」そのものは具体的文脈ではいかなる意味が実現されるのか。全く抽象的な世界に属する数詞の一つとなるのである。
文字の成立史から見ると、「六」が陸よりも古い。しかし「六」は最初から陸を予想して図形化が行われたと考えられる。つまり「ᑎの形に盛り上がる」という抽象的なイメージは丘という具体的なものを念頭において発想されたふしがある。というのは数詞を作る際、「むっつ」という数をどのように名づけ、どのように図形として表象するかを考える際、まず数の特徴をつかまえる必要がある。数の特徴の一つは数の性質に着目することであるが、ほかに数の数え方の特徴に着目することもある。四までは数の性質から発想されたが、五と六は数え方の特徴から発想されている。十進法は人間の指が十本あることに由来する記数法であろう。数は片手の指でも数えることができる。10まで数える際、5(いつつ)は片手で終わる。10の半分であり、折り返し点(交点)に当たる。だから古典漢語では「交差する」というイメージをもつ「五」を創作してngag(いつつの意味)を表した。次の6(むっつ)は5に一本を付け足した数である。5を数える場合、おそらく指を折り曲げた考えられる(古代の指文字の証拠はないが)。指を折り曲げると握り拳になる。これの後に上に指を一本突き出したのが6の数え方と考えられる。この形状を盛り上がった形(具体的には丘)に見立てる。かくて「むっつ」という数詞を「六」という記号で表記する。以上のように六は陸(おか)を予想して創造された数詞であると考えられる。
陸を発掘すると数詞の「六」が見えるのである。